協会運営や猫の習性生理などに対する問い合わせがありました。その回答は、当会の活動理念の柱となっています。以下、主な事例を紹介いたします。


<協会運営に関すること>

1Q.なぜ猫の譲渡会を優先して活動しないのですか?

A.繁殖制限が最優先と考えるからです。

 仔猫の譲渡会は、行政や他の愛護団体等で行われており、苦労を伴う大変重要な活動と思っております。しかし、当会では、その元凶となる猫の繁殖力に着眼点をおき、繁殖防止のための不妊手術を推進することに特化し、運営してまいりました。

 *当会の活動は、こぼれ出る水をふき取るより、水の出口である蛇口を閉める活動を推進することにより、不幸な猫をこの世に産み出さない活動を中心に実施しています。

(H26年度当会手術実績:メス猫593匹のうち妊娠猫124匹、胎仔数547匹、)

2Q.なぜそんなに安く不妊手術ができるの?

A.ボランティアにより実施しています。

 当会は、現在NPO法人として活動しておりますが、携わる職員は獣医師も含めボランティアにより構成されております。これらのことから、当会は一般法人と異なり、多くの人件費を必要とせず、また、手術を実施する獣医師にも格安の技術料でお願いしているため、経費をおさえて活動を行うことができるのです。

 

<不妊手術に関すること>

1Q.不妊手術はやっていいことなの? 

A.繁殖のストレスから解放するためです。

 家族同様に大事にしている猫や犬に対し、私たちはよく擬人化して動物たちのことを考えてしまいますが、猫は動物であり、本能により行動を決定しております。

 繁殖活動は、この本能とホルモンの作用により支配され、子孫を残すための行動をとります。メスは、生後6~8ヶ月位で性成熟し、最初の発情を迎えオスを求め、オスはそのメスに引き寄せられ繁殖します。

 発情したメスもオスも繁殖に係るストレスは多く、異性に出会わないよう閉じ込めておくことは、ほとんどできません。また、繁殖に係わる喧嘩も多く、オスのみでなくメスも大きな怪我を負い、ノラ猫ではこれが原因で死亡してしまうこともあります。そのような状況の中、繁殖活動の原動力となるメスの卵巣と子宮、オスは精巣を摘出し、その活動を未然に防ごうと考えています。

2Q.一度は出産させて、母親としての優しさを身につけさせたい?

A.人間の感情とは異なります。

 生後2~3歳までの活動は活発で落ち着きもありませんが、歳を経るごとに落ち着くことが多く、人間とは異なり精神世界の広がりが無いと思われている動物たちでは「妊娠・出産・授乳」が優しさを育むことの要因としては、あまり考えられないと思われます。

 不妊手術を行った猫は、本能を突き動かすホルモンの作用から解放され穏やかになることは間違いありません。

3Q.若いうちに不妊手術した方がよいの?

A.生後6~7ヶ月が良いと思います。

 遺伝学的には、若い卵子や精子の方が産まれてくる子の奇形率や病気が少ないと言われておりますが、メス猫は、生後6ヶ月位で繁殖活動を始めてしまう個体がいますが、まだまだ未熟な体のうちに妊娠してしまうと、胎仔を成長させ、授乳のために栄養が奪われ、母親である幼いメス猫は、体力の無いキャシャな体になってしまいます。

 完全に性成熟し、何年も経過した猫では、卵巣や精巣を切除する不妊手術後、ホルモンバランスが崩れることからくると思われる体の変調がしばらくの間、くるものも出てきます。

 このようなことから、当会では、メスでは生後6~7ヶ月前後、オスでは、スプレー行為が始まる少し前の生後7ヶ月位に不妊手術を実施するようお勧めしています。

4Q.ネコの繁殖活動について教えてください

A.メスの子猫の発情は、生後6ヶ月位から始まります。

 メス猫は、生後6~8ヶ月で繁殖活動を開始しますが、早い個体は6ヶ月ですでに妊娠していることも多くあります。また、オス猫は、メス猫より遅く生後8~10ヶ月でオスとしての行動をとるようになります。

 性成熟した個体は、早春や晩秋の繁殖シーズンには多くの個体が発情し、繁殖活動が見られますが、メス猫は妊娠期間が平均的に62~65日、授乳期間が1ヶ月、そして授乳が終了すると発情を繰り返し、通常、年2~3回妊娠・出産を繰り返します。(当会の会員が管理していた猫で、20歳を過ぎて出産をした猫がいました。)

 一回の出産で、4匹程度の仔猫が産まれ、更にその仔猫が6~8ヶ月後には、親猫と同じ繁殖活動を起こし、ネズミ算のように個体数が増加してしまうのが現状です。

 閉鎖された環境でオスとメスが一緒に暮らしていれば、メスが発情兆候を示せば、親子・兄弟関係なく、本能とホルモンの作用により、繁殖行動を起こします。その結果、望まれない多くの仔猫が産まれてしまいます。

 数匹分の里親は、見つかるかもしれませんが、貰い手がつかず不幸な結末を迎える仔猫たちも多いのです。

繁殖活動は、子孫を残そうとする本能と繁殖活動を起こさせるホルモンの作用によりおこるもので、人間が思う倫理観などは全くありません。

 *猫の平均的な受胎数は、4.2匹(H26年度当会実績)となっています。また、猫の繁殖は、交尾刺激排卵によるため必ず妊娠し、発情中に何匹ものオスと交尾し、まったく毛色の異なる仔猫を身ごもり、発育段階も異なることも多く見受けられます。

5Q.なぜ妊娠している猫の不妊手術が大変になるの?

A.手術の傷が大きくなるのと同時に大きくなっている胎仔にも命があります。

 当会では、通常メスの不妊手術(卵巣子宮摘出手術)は、下腹部を1.5~2㎝程、切開して行いますが、妊娠していると、その経過日数に応じて大きくなり、妊娠末期には6~7㎝も切開しなければなりません。小さい猫の体に対し、これだけ大きな傷を付けることは、猫には大きな負担となり、大きなストレスとなります。また、あと数日で生まれてもおかしくないほど育っている胎仔が余りにも可愛そうではありませんか?このようなことから、当会では、妊娠していない時期の手術をお勧めいたします。

 季節的に見ていくと、長野地域では多くの猫が繁殖活動を盛んに行う1月から3月と7月から9月頃が猫にとって負担の少ない時期と言えるでしょう。また、前年に生まれた子猫は季節的な繁殖活動より、成長による繁殖活動が主となるため、生後6~7か月で手術を行うことが負担の少ない時期と言えるでしょう。

 なお、当会では、摘出した胎仔を霊園施設で火葬・埋葬し、慰霊墓参しております。

 

<譲渡会に関すること>

1Q.仔猫は、すぐに貰い手がつくのではないですか?

A.それはとても難しいことです。

 多くのボランティアさんが係わって、いろいろな場所で譲渡会が開催されておりますが、持ち込まれたすべての猫が貰われていくわけではなく、可愛い仔猫に希望が集中し、残ってしまう仔猫や成猫が多くおります。

 また、安易に希望者に譲ってしまうと、「猫詐欺」にあう可能性もあり、里親探しは、慎重に行わなければなりません。

 

<猫の習性生理に関すること>

1Q.猫を家の中だけで飼ったらかわいそうじゃないですか?

A.不妊手術をすれば大丈夫です。

 動物の本能は、まずは子孫を残すことです。そのために色々な行動をとることになるのですが、不妊手術を行ってしまえば、本能を突き動かすホルモンの影響がなくなり、エサと水、そして安心して暮らせる住環境と猫トイレがあれば、外に出ることはありません。飼主が時々遊んであげればそれで十分です。

2Q.ノラ猫は、強いからみんな元気なんじゃないですか?

A.ノラ猫の平均的な寿命は3年程度と言われています。

 ノラ猫の平寿命を5歳位ではないのかと発表した愛護団体の方がおりました。特にオスはメスを獲得するためにオス同士で喧嘩をし、傷が化膿し死亡するケースが多いと思います。また、オスでもメスでも、ノラ猫は、エサの確保ができず腐ったものや毒物を食べたりして死亡することもあり、また、汚れた水を飲んだり、ネズミ・カエル・小鳥・セミ・バッタなど捕まえて食べるため、寄生虫症などに罹患している場合も多く見受けられます。更に予防接種などを受けていないことから感染性の病気に罹患し、死亡したりしています。仔猫は、キツネやカラスなどの外敵に捕食されてしまうこともあります。このようなことから、ノラ猫の寿命は短いものと思われますが、それを上回る繁殖力が、ノラ猫を増加させている要因だと思っています。

 

<猫を飼うことによる苦情などに関すること>

1Q.ノラ猫にエサを与えていたら増えてしまったのでどのようにすればよいのでしょうか?

A.不妊手術をしましょう。ノラ猫用の捕獲オリもあります。

 おなかをすかしている猫を見ると可哀そうに思えてなりません。これは否定することのできない感情ですが、単にエサを与える行為は、更に不幸な仔猫を産み出すことにつながって行きます。エサを与える人は飼主とみなされることから、その責任を果たすために一匹のうちに不妊手術をしてしまえば、費用も一匹分で済みます。余談ですが、猫が捕まらない等のお悩みがある場合は、当協会にあるノラ猫捕獲オリがありますのでご相談ください。

 エサを与える場合は、その時その時に1回分づつ与え、その都度、余ったエサは片付けます。数回分を一度に置いてくる「置きエサ」は、周辺のノラ猫、外猫ばかりか、飼い猫までも集めることとなり、そこが猫たちの「たまり場」となって、繁殖活動がおこり、多くの仔猫が産まれ、その仔猫たちも数ヶ月後には仔猫を産むことになります。その近隣地域では、猫の糞害や畑、庭を荒らされたり、人家に侵入されたりして人の被る被害も多くなります。他方、エサにありつけない哀れな猫が増えることにもなります。このように、人にも猫にも最悪の状況を招く前に、まだ一匹のうちに繁殖防止措置を行ったうえでのエサやり行為のみが認められます。

 その際、ノラ猫や外猫(飼主不明猫)の問題は、地域の環境問題であることを理解してもらうために協力者を募ることや、自治会等とも協議することが大切です。個体の数の把握、エサの管理、糞尿の始末、不妊手術やエサの費用等々、解決しておくべき大事な課題があることを理解しておかなければなりません。猫の嫌いな人も地域の環境問題を解決するため、猫の好きな人も含め問題解決を図るよう行政の指導のもとに取り組んでいただきたいと思います。

これらの対応は、現在、TNR活動をとおし、「地域猫活動」として殺処分ゼロを掲げる保健所でも積極的に取り組みを行っております。

 *法律的には、エサを与えている人は、その猫の管理者(飼主)とみなされ、何か起こった際には、その責任が問われることになります。

 *TNR活動:T(Trap;捕獲)、N(Neuter;中性化(不妊手術))、R(Return;元の場所に戻す)。この際に耳先の桜カットなどを実施して手術済であることを他者が外観確認できるようにすることをお勧めいたします。

 

<保健所で行われている犬猫の殺処分方法について>

Q1保健所では、犬猫をどのように殺処分しているのですか?

A.詳細は保健所にお問い合わせください。

 当会にて知り得ていることについてお答えしますが、詳細については、直接、最寄りの保健所にお尋ねください。

動物行政を行っている保健所では、現在、保護したり、引き取った犬猫について、極力、飼主に返還されるよう努力をし、また、犬猫の引き取りも安易に引き取ることをせず飼主の責任を全うするよう指導しておりますが、引き取らざるを得なかった犬猫については、譲渡会などを開催し、新しい飼主を探して、殺処分を極力減らそうと努力をしています。

 しかし、止むを得ず殺処分をしなくてはならない犬猫については、処分施設において、炭酸ガスによる殺処分を行っています。

この炭酸ガスによる殺処分そのものは、炭酸ガス麻酔理論に基づいて行われれば、安楽死であると言われています。

 なお、当会としては、止むを得ず殺処分する場合は、処分場までの搬出・輸送、及び処分機に閉じ込められる際の恐怖心を抱かせず、また、炭酸ガス麻酔理論のとおり執行されるのであれば、仕方がないことかも知れませんが、現実的には、これをすべてクリアすることはできません。従って、当会では、保健所において、経口麻酔薬を使用するか、注射による全身麻酔を施した後に殺処分を一匹ごと丁寧に行っていただきたいと考えております。

 この殺処分は、必要悪と考える方々もおられますが、できればこれを行わなくて済む社会づくりが必要であり、これを実現させるため、行政においては、更に強力な啓発活動を推進していただきたいと思います。